昔ばなしで夜明けを告げるのはニワトリだが、ここ札幌・桑園地区ではカラスだ。近くのマンション屋上から一番鳥が声を上げると、しばらくして二番鳥が無き、時には三番鳥も鳴く。カラスが互いに呼び交うことができるのかわからぬが、何故か鳴き声が重複することはない。

これで思い出すのが漁業のまちの中学校校歌だ。「朝焼けの船出 内浦湾 / 理想の旗掲げ 呼び交いて」とあった。はて?呼び交うのは人(漁師)なのか船なのか?幼心に疑問に思い、早起きして漁港へ確かめに行ったことがある。漁船のエンジン音が鳴り響く中、ゆるりと一艘、また一艘動き出す。その一瞬の「揺らぎ」が互いに呼び交っているかのように見え、なるほど、船が呼び交うとはこのことかと納得した記憶がある。

また、同じく地元小学校の校歌には「我がふるさとの良き民と 日ごとの務め励みなん」とあった。大人になって地方自治の現状を知ると「ふるさとの良き民」とは何か、答えは極めて悩ましいなどと考えてしまうが、当時は意味不明のまま丸暗記で歌っていた。

地方創生が声高に語られて久しいが、地域の独自の魅力を表現するのは意外と難しいものがある。そんな時は地元の校歌を振り返ってみてはいかがか、その町で暮らす人々の誇りや希望などが歌われており、そこに地方再生の原点がひそんでいるかもしれないと思っている。