来年は寅年。調べれば寅は干支によっていろいろな特徴があるという。2022年のトラは「壬虎(みずのえとら)」で、母虎(優しいトラ)の特徴があるそうだ。
しかし、世はまさにデジタル時代、行政書士にとっては優しくない年になりそうだ。先日、政府はデジタル臨調を開催し、向う3年で対面・書面を廃止する「デジタル原則」を掲げた。「官公署に提出する書類」作成の多くは、スマホやタブレットを用いて非対面で入力申請することができるようになる。おそらくデジタル・ファーストにより入力内容や添付書類なども大幅に簡略化・簡素化されるであろう。他人に頼まなくても申請できることが肝要なのである。したがって、行政書士が従来型の許認可申請業務を”虎の子”の如く大事に守ろうとしても、おそらく時代の流れがそれを許さないであろう。若くして試験に合格して行政書士を開業した方には申し訳ないが、私は「定型的」「代書的」な書類作成業務を核とした行政書士業は、今後はパイが縮小していくことを覚悟すべきであると思っている。
一方、行政書士は一定年限以上の公務員経験で開業することができる。そうした行政書士は、その知識と経験こそが他の士業との差別化を図ることができる強みである。なぜなら行政内部の政策決定プロセスや法律に連なる条例・規則・要綱などの内部ルールを熟知しているからである。 (NHK札幌放送局にて撮影)
例えば、非対面の世の中だからこその社会貢献が求められており、まさにピンチをチャンスに変えるソーシャル・ビジネスの活性化が期待される。これからこうしたビジネスを始めたい人へのサポートは、公務員の知見があれば所管部署の紹介にとどまらず各種助成金の申請書作成など、その目的に応じた行政のバックアップを引き出すことができる。補助金・助成金の申請も審査する側にいたからこそのアドバイスができるのである。これらは「官公署に提出する書類」であっても非定形型であり、時の政策との整合性や地域社会の寛容性などを適切に判断できなければいけない。まさに公務員の知識と経験に基づくアドバイスやコンサルティングを必要としているのである。これからの行政書士業はそんなクリエイティブな稼業にならなければいけないと思う。
今、行政書士会は士業紹介のコピーとして「まちの法律家」を掲げている。しかし私は、「法律家」というよりも法を順守し実践してきた実務者のプロとして、「行政マイスター」を自負する行政書士でありたいと思っている。