平成の時代から茶道教室に通っている。茶席では亭主と客が一服の茶と菓子をいただきながら軽妙な会話で季節感を楽しむ。茶室は4畳半を基本とする狭い空間を共有する「詫びさび」の世界である。ましてや濃茶の場合、客同士で「一椀を共にする」、いわゆる回し飲みするのが習わしだ。
そこに新型コロナが来た。「3密」となる空間を避けよ、飲食時の会話は避けよと、ことごとく真逆の行動変容を促す大号令である。私の通っている教室は一時閉鎖となった。
それでも今は、マスクをしながら練習を続けている。伝統文化と相いれない感染対策指針であるが、だからこそ見えてくるものがある。マスク越しの向こうに、見た目ではない本心からの「互いを尊重し合い、仕えあう心」はあるかが問われてくる。
“その道に入らんと思ふこころこそ 我が身ながらの師匠なりけれ”と説いた利休の学びの心構えはアフターコロナにおいても変わらず、伝統文化の火は消えることはない。
<平成26(2014)年6月 清田区役所にてフィンランド訪問団をおもてなし>